(以下、月刊マクロビオティック2016年6月号より引用)
香川県小豆島にある、大変貴重な杉桶でつくられている「杉桶仕込み有機醤油」の製造工場を訪ねました。
小豆島と醤油
近年オリーブオイルやそうめんをはじめ、話題となっている小豆島と醤油の関係を「丸島醤油」の山西社長に伺いました。 小豆島で醤油の製造が多い理由として、以下4つが考えられます。
気候が適していること(冬はマイナス5度、夏は30度と四季がはっきりしています)
原料が調達しやすかったこと(小麦と大豆をたくさん栽培していました)
交通の便がよいこと(本州・四国・九州に船で商品を運べ、帰りに原料を調達できました)
小豆島の半分が幕府の領地だったため、上納する年貢がほぼなく、つくればつくるだけ利益になったこと
丸島醤油と桜沢如一先生
創始者の一人、杢谷清(もくたにきよし)氏は、昭和40年、心労・過労による胃潰瘍で術後が悪く、生死をさまよっていたときに桜沢如一先生に出会い、玄米食で助けられました。
当時の醤油の製法は、戦後のアメリカの指示により、早く安くできるものでしたが(速醸法)、昭和41年に小豆島を訪問された桜沢先生から「今の製法は本物の醤油ではない。命ある大豆から本物の醤油を作るべきだ。」と、厳しい指摘を受けました。
杢谷氏はこの指摘に心から納得し大変革を決意し、一切の促成的な作り方を止め、熟成させる伝統製法へと転換したのです。
大変貴重な杉桶
全国に杉桶は約2千個あり、そのうちの半分の千個が小豆島に、さらにそのうちの204個を丸島醤油が所有している、とても貴重な杉桶です。近年は桶を作れる職人がいなくなり、桶の修理も金属を使うなど、本来の桶ではなくなってきています。
醸造蔵の中に入ると、少し緊張してしまうようなひっそりと澄んだ空気と熟成中の醤油の芳しい香りに包まれます。 1つの桶は直径2m×深さ2mあり、約5400L(30石)の容量。その桶から約3200Lの醤油ができます。 桶は吉野杉を竹でしばって作っています。竹はしなりがあり、夏場に膨張した際にも適応できるのです。桶の寿命は120年程と言われ、古い桶はあと10年程で寿命になってしまうそうです。
桶を下から見せていただくと、中には「明治参拾八(38)年」に作られた桶もありました。 桶の間にはデッキが作られ、歩くことができます。昔、小豆島には水軍の船を作る技術があり、そのため、桶の間に綺麗にデッキを作ることができたそうです。
杉桶仕込み有機醤油ができるまで
杉桶醤油は有機丸大豆・小麦、塩のみでつくられます。有機丸大豆は水に浸した後、蒸します。有機小麦は炒ってから砕きます。大豆と小麦、種麹を混合し、3日かけて麹(しょうゆ麹と言います)をつくります。その後塩水と混ぜ(もろみと言います)杉桶にて熟成します。
2夏以上じっくり熟成させたもろみを機械で布に広げ、300〜400段ほどに重ねていきます。徐々に負荷をかけ、3日間かけて搾ります。この搾ったものを「生揚(きあ)げ醤油」といいます。搾りかすは飼料や肥料、下準備の熱量などに使われています。
1週間程静置した後、表面に浮いた油分を取り除きます。その後、火入れ・澄まし・ろ過を行い、紙パックに充填して商品ができあがります。
全国でも大変貴重な杉桶でじっくり熟成された「杉桶仕込み有機醤油」をぜひ召し上がりください。
―月刊マクロビオティック2016年6月号より引用―